第3章の目的

これまでのお話で

体にとって有害な毒が溜まり、不調体質になって慢性炎症を引き起こしている

ということがわかりましたね。

では、何が慢性炎症を引き越しているのか?

有害な毒とはなんなのか?

それをこの第3章では深堀りしていきます。

第3章の目的
  • 健康体質になるために理解しておくべきポイントを押さえる
  • 有害な物質は何かを判断できるようになる

慢性炎症を引き起こす不調体質とは?

第1章で説明した不調が出現する流れを覚えていますか?

不調が出る流れ
  1. 体の中に有害な毒が溜まる
  2. 毒が取り除けずに不調体質になる
  3. きっかけが加わる
  4. 不調の症状が出現する

これですね。

不調体質になって、慢性炎症を引きおこすことが、様々な不調が出現する原因ということでした。

つまり、あなたの不調を改善するためには、不調体質から健康体質になる必要があるわけです。

この不調体質と健康体質について少し深堀りしていきましょう。

健康体質になるために押さえておくべき理論:進化医学

健康体質へのヒントが進化医学です。

「進化医学ってなに?」

って思ったあなたにもわかりやすく説明すると、

人類を含めて生物は進化をしながら環境に適応してきた。(環境に適応した生物が生き残った)』

という進化論をベースにした医学のことです。

「進化論?なんか難しそう…」

と思ったかもしれませんが、そんなに難しくありません。

ここを理解しておくだけで、あなたが健康体質になるためにどうすればいいのかわかってきますので、簡単にでいいので続きを見てくださいね!

人類の進化の歴史

そもそも人類はどのように進化をしてきたのでしょうか?

現代の人類の基礎がつくられたのはおよそ600万年前と言われています。

その時代は狩りをしたり、木の実などを採集したりなどのその日暮らしをして生活していました。

当然食料は保存しないので、ある程度飢えはあったでしょう。

朝起きて、飢えを感じ、木の実を探したり、獲物を狩ったりする。

それが大昔の狩猟採集文化でした。

今から1万年前の農耕生活を送るまでの、およそ590万年ほどの年月は狩猟採集の生活をしていたわけです。

ところが、農耕生活をするようになると、多少なりとも食料の保存ができるようになります。

そして、そこからどんどん生活が豊かになって村をつくり、国を作ってきました。

極めつけは1800年代~の電気を使ったものの発明の連続です。

マクスウェルやベルやエジソンなどによって、電気の基礎がつくられ、電話や蓄音機、電球など、どんどん発明が進みました。

そこから急速に世の中は便利になっていきました。

食料に保存は効くし、人工的に様々な物が作れるようになりました。

少し前までは携帯電話を持たない世代も多く、PCは多くても一家に一台だったはずなのに、気づけばスマホという携帯できるPCを誰もが持っています。

このたった数百年の間に人類はかなり便利な生活を送れるようになりました。

ところが、文化が発展したにも関わらず、私たち人類の身体や機能は700万年前とほとんど変わっていません

なにせ、600万年の間ずっと同じような生活をしていたのですから。

1万年程度の時間、まして急速に発展したここ200年で人類がその生活に適応できるほど進化ができていないのです。

大昔の人は不調を起こさなかった!?

第1章でも書いたように、現代の不調は不調体質による慢性炎症が原因です。

ところが、生活習慣病、自律神経失調症、うつ病、アレルギー、不眠、癌、注意力散漫などの不調は大昔と同じような暮らしをしている狩猟採集民にはほとんど存在しないことが様々な研究でわかりました。

大昔の人の状態を観察することはできませんが、現在でも大昔と同じ狩猟採集文化の生活を送っている人達がいます。

そう、アフリカなどの原住民の人たちですね。

1989年の調査にパプアニューギニアの狩猟採集民(キタヴァ族)220人の健康状態を調べた調査によると、キタヴァ族の健康状態はすこぶる良くて、現代人が悩みがちな糖尿病、脳卒中、動脈硬化などの慢性炎症による不調を起こす人は1%程度しかいなかったことがわかりました。

しかも、80代の人は認知症にかからず癌の発症もほとんどしない健康体だったのです。

これってすごくないですか?

もちろん220人という少ない人数を調べた調査ですが、日本人と比べるとすさまじく健康です。

なにせ、日本人の場合、

2011年の糖尿病患者は326万人で全体の2.4%(患者としてわかっている数なだけで推定は1000万人)です。

生涯、癌に罹患する確率は男性で65%、女性で50.2%と言われています。

他にも、同じパプアニューギニアの別の民族2000人の調査では、

うつ病に悩む人がほぼゼロで(もしかしたら1人くらいはいたかもしれませんが)、

この民族のうつ病発症率は先進国の1/100程度しかないことがわかりました。

ちなみに日本人のうつ病患者数は2020年でおよそ170万人、日本人の8人に1人です。

この民族の何が凄いかって、精神的に病んでいないので自殺する人は1人もおらず、そもそも「絶望」を意味する言葉すら存在しなかったことです。

それだけ、狩猟採集民は現代病とはほぼ無縁の環境で暮らしているのです。

集中力低下も現代病の1つ

第1章でお伝えした現代の不調の一覧の中に、ちょっと気になることがありませんでしたか?

不調の中に、『注意力散漫』とか『集中力低下』などの一見すると

「え?これも不調なの?」

と思うような症状を書かせていただきました。

実はこういった一見するとその人の性格の問題のように思うようなことも【現代病】の一つなんです。

これにも面白い実験があります。

2013年のロンドン大学の実験で、アフリカの民族とロンドンの若者の集中力の差を比較したものがあります。

当然この民族は狩猟採集民です。

結果は、狩猟採集民の集中力がロンドンの若者と比べて40%も高かったのです。

これはすさまじい差ですよね。

仕事に集中できる時間が1.5倍長いってことですからね。

また、2017年のテキサス大学の実験では、スマホを近くに置いていると、たとえ電源を切っていても集中力が半分に減少するということがわかりました。

デジタルデバイスが近くにあるだけで、現代人はそれが気になってしまうということです。

このように集中力低下、注意力散漫も現代病の1つと言えるのです。

狩猟採集民と現代人では炎症の種類が違う

ここまでのお話で慢性炎症について少しわかってきましたか?

どうにも現代人が悩みがちな不調は狩猟採集民には少ない、つまり昔と今の暮らしの差が不調と関係しているようです。

昔の人と現代人では、不調の出方が違います。

狩猟採集民の不調は基本的に、ハッキリと分かりやすい急性炎症が多いです。

怪我をすれば血が出ていたいですし、風邪や感染症を起こすと熱が出るように、明確な症状がありますよね。

それに対して現代人はぼんやりとして分かりづらい慢性炎症が多いです。

よくわからないけれど、頭痛がする。

なぜか知らないけれど眠い。

みたいな感じで、原因はわからないけれど確かに自覚症状があります。

これらは、昔と今とで暮らしの違いがあるからと言えるだろうというのが私の見解です。

現代人が不調体質になってしまう要因

不調体質になってしまう要因を理解するためには、狩猟採集民との生活の違いを考える必要があります。

「生活の違いって…全然違うじゃん!」

まぁその通りなのですが、ここでは、ハーバード大学の古代人類学者の方が使っているフレームワークを採用します。

(わかりやすいので)

その内容は以下の通り

現代文化と狩猟採集文化の違い
  1. 古代よりも増えすぎてしまったもの
  2. 古代よりも減りすぎてしまったもの
  3. 古代にはなくて現代にはある新しいもの

この3つの違いがあります。

それぞれ詳しく解説していきますね。

現代と古代の文化の違い①:古代より増えすぎてしまったもの

1つめは古代より増えすぎてしまったものです。

古代より増えすぎてしまったもの
  • カロリー
  • 糖質
  • 塩分
  • リノール酸
  • 乳製品
  • アルコール
  • 飽和脂肪酸
  • 満腹感
  • ストレス
  • 不安
  • 価値観
  • 衛生設備
  • 人口密度

一覧でいうとこんな感じですね。

特に変わったことは食習慣でしょう。

大昔ではカロリーの高いものを摂取することは難しく、体はカロリーを求めていました。

高カロリーのものや糖質を摂取すると報酬系が刺激され、ドーパミンという興奮物質を分泌させます。

ようやくありつけた食材に興奮するわけですね。

現代に生きている私たち人類の体もどうように、高カロリーのものや糖質を摂取するとドーパミンを分泌するわけですが、いかんせん大昔よりも簡単に手に入るようになってしまいました。

するとどうなるかというと、次々食べたくなる、つまり依存するようになります

麻薬と一緒ですね。

体の中に多くなって消費されない糖質は脂肪となって体の中に蓄えます。

ところが、この肪は体にとっては異物ですから、脂肪がたまっている限り体は炎症を起こします

これが慢性炎症です。

慢性炎症によって不調を起こしてしまい、様々な病気にかかっていいます。

これがメタボリックシンドロームというやつですね。

このように食生活が豊かになったことによるデメリットが現代の文明社会を生きている私たち人類にはあるわけです。

食生活以外にも、現代では様々なものが増えていて、過剰になっていると理解してください。

現代と古代の文化の違い②:古代よりも減りすぎてしまったもの

続いて2つ目が、古代よりも減りすぎてしまったものです。

古代より減りすぎてしまったもの
  • タンパク質
  • 食物繊維
  • 良質な脂肪
  • ビタミン
  • ミネラル
  • 睡眠
  • 空腹感
  • 運動
  • 筋肉
  • 太陽光を浴びる時間
  • 人との深いコミュニケーション
  • 自然とのふれあい

こんな感じですね。

昔は自動で動くものがなかったわけですから、自分自身の体を動かさなくてはいけない分、筋肉量が多くあったことが予想されます。

当然動いている時間も現代人より多いです。

動くのは外ですから、太陽光は自然に浴びますし、自然と触れ合う時間も多いですね。

また、食事に関しては、大昔は野菜や肉を育てて食べるのではなく、自然のものを狩猟採集していました。

ということは、野菜は天然で栄養が豊富、当然人工肥料や農薬は使われていません。

動物は自然の物を食べているので、肉にもその栄養が含まれています。

ですから、肉を食べても動物から必要な栄養を得ることができました。

活動を終えると、夜は暗くなるので、何もできません。

安全なところで睡眠をしますので、不眠になることもないです。

(というか寝不足とか不眠に該当する言葉すらありません。)

これは狩猟採集民族によくあることですが、

1日の3~4時間程度を狩りや採集に時間を割き、

それ以外の時間は、みんなで踊ったり歌を歌ったりして過ごすことが多いです。

1つの集団が家族のように互いにコミュニケーションをとって過ごしています

一方で現代は、外に出なくてもPC一台で仕事ができるようになりました。

座りながら、ろくに動かなくても一日を過ごせますし、ウーバーイーツで注文をすれば、家から一歩も出ず、動かずに食料にありつけます。

夜はスマホをいじり、電気をつけているので寝つきが悪くなって睡眠不足になることもしばしば。

ひどい人では夜寝付けない睡眠障害になっている人もいます。

人との深いコミュニケーションをする機会も少なく、

自分を外にさらけ出すことができず、表面上の付き合いをすることが多いです。

家族なのに会話が少なく、お互いスマホでSNSを見ているなんてこともありますよね。

2015年のブリガムヤング大学の分析では、

孤独感が喫煙や肥満と同じくらい全身に慢性炎症を起こしやすくし、26%~32%も死亡率を高める

ということがわかりました。

この、古代より減っていたものが、私たちの体をより慢性炎症を起こしやすい不調体質にしている可能性は否定できません。

現代と古代の文化の違い③:古代にはなくて現代にはある新しいもの

3つ目が古代にはなくて現代にはある新しいものです。

古代にはなくて現代にある新しいもの
  • 加工食品
  • トランス脂肪酸
  • 人工甘味料
  • 食品添加物
  • 農薬
  • 人工照明
  • 電磁波
  • デジタルデバイス
  • ネット通信
  • 化学物質
  • 重金属
  • 慢性的なストレス
  • プレッシャー
  • 孤独
  • 抗生物質
  • 消毒液

冒頭でも少しお話した通り、人類はこの100年程度で急速に発展しました。

便利な世の中になって、様々な利点ができるようになりました。

食事についても新しいものが増えてきました。

よりおいしくする、様々な場所に届けられるように、

人工甘味料や人工添加物を多くしています。

手軽においしいものをたくさん食べられるようになったことで、私たちは食事による不便さを感じることはほとんどなくなったと言えます。

しかし、その快適さによって、狩猟採集時代にはなかった人工物までも口にする機会が増えました

何度も言うように、私たち人類は狩猟採集時代からほとんど進化していませんから、人工物を処理できるようには作られていないと考えられます。

(今後、数万年かけて進化していく可能性はあります。)

人工油として有名なのは、安いサラダ油などに含まれているトランス脂肪酸ですね。

トランス脂肪酸は油と人工物を掛け合わせて作れる安い油で、大量生産が可能です。

ですが、2005年のハーバード大学の論文によって、トランス脂肪酸の摂取量が多いほど体内の炎症レベルが高いことが発表されました。

普段何気なく外食したり、コンビニご飯を食べることはあるかと思いますが、その際にトランス脂肪酸や人工物を口にして、体内の炎症レベルが上がっている可能性は十分にあります。

食事以外で言えば、文明社会になって増えたものがあります。

デジタルデバイスですね。

仕事のプレッシャー孤独感です。

このプレッシャーや孤独は普段から何気ないぼんやりとした不安を生み出します。

2017年にWHOが行った調査では、不安障害の発症率は先進国になるほど高く、発展途上国の80倍、不安障害の発症率があることがわかりました。

不安レベルが高い人は心疾患や脳卒中のリスクが29%上昇するということが2013年の観察研究で分かっていますから、現代の不安はなかなかの危険であると言わざるを得ません。

いずれもどうして上昇するのかという機序まではわかっていないようですが、大昔の暮らしから考えて、生活スタイルが変わってしまったからこそ、現代の不調があると考えられます。

悪いのは誰でもない

ここまで話をすると

「私の努力が足りないんだ・・・」

と悲観的に思ってしまう人がいます。

でも、そうではないです。

急速に発展した便利な文化に、私たち人類が適応できていないだけなんです。

これは文明社会に生きている人全員に言えることなので、誰が悪いわけでもありません。

もちろん、健康のためにはある程度、生活スタイルを考える必要がありますが、

「便利な世の中を活用するな」

ということではありません。

むしろ便利な世の中だからこそ、自分の健康に気を遣いながら豊かで快適な生活ができるんです。

ですから、自分が悪いとか世の中が悪いとか思わず、健康のためにやるべきことをしようと思ってくださいね!

まとめ:健康体質を実現するためにあなたが知っておくべきこと

ここまでお話していかがだったでしょうか?

この章であなたは以下のことがわかりました。

人類の進化を考えると、狩猟採集をしていたころに合わせて人類は進化したと考えられます。

つまり、現代に生きている私たち人類は、急速な文明の発展に対して、進化ができておらず、それによって様々な不調を起こしている。

ということでした。

狩猟採集時代から考えて変わったものが3種類ありましたね。

現代文化と狩猟採集文化の違い
  1. 古代よりも増えすぎてしまったもの
  2. 古代よりも減りすぎてしまったもの
  3. 古代にはなくて現代にはある新しいもの

増えすぎたものによって慢性炎症が起こり、

減りすぎたものによって炎症に対応できなくなり、

新しいものによって新たな古代では考えられなかった問題も出てきました。

あなたが今後、健康を意識した生活を送るのならば、

「これは狩猟採集時代にはあったのか?」

という視点を持つことで、一つの行動指針になるかと思います。

現代に生きている私たちは、いまさら古代の生活に戻ることはできません。

これは誰が悪いわけでもないのですが、人類の進化に合わせた、ベストな選択をしていきたいですね。

それでは次の章でお会いしましょう!